琉球大学名誉教授でNAZEN呼びかけ人でもある矢ヶ﨑克馬さんから10・21福島大行動に向けたメッセージをいただきましたので、転載します。
住民の命を守り、主権在民の政治を確認するために。原爆被爆以来繰り返されてきた「内部被曝隠し」による住民の命切り捨てを許してはならないと思います。
日本政府は、東電の原子力発電所が事故を起こした時点で、何も国民を守る術を知らず、国民を犠牲にすることを真っ先に行いました。それは爆発直後に安定ヨウ素剤すら与えず、被曝限度を1m Svから20mSvに引き上げることから始まりました。原子力発電所の事故があった時に、児童に対してどんな保護策や避難方法を指示すべきか、病院に対してどのような患者さん移送体制を整えるか、市民を放射能から保護してその恐怖をどのように検知してもらうか等々、一切が「安全神話」により検討さえされていない状況でした。これは、老人病院の患者さんが強制移送によって何人も命を失ってしまう事故として表面化しています。
また、原子力発電所の事故に際して国家としてどのような体制を整えるべきか、という住民を守る国の備えも全く先例を学ぶことが無いものでした。ウクライナは年間1mSv以上の汚染地は住民保護として(強制的あるいは希望によって)「移住」を対象とするものでした。 スイスやポーランドは汚染のひどい地域の牧畜製品を一切移動・販売禁止にして、生産者に対して国家補償を行う措置を取りました。
日本政府は何をしたのでしょう?東電と国家の責任を可能な限り免罪することに狂奔し、国民の命を軽んじてきたとしか言いようがありません。
福島市の汚染状況をチェルノブイリ周辺の地域に比較すると、ルギヌイ地区とほとんど同等です。ルギヌイ地区の住民の健康状態は、この地区の土壌汚染の平均値が年間1mSvに達していないのにかかわらず、住民の免疫力が急速に低下し病気の発症率も、治癒力も著しく悪化しました。たった5年後には平均寿命が男性では15歳、女性では5-8歳減少しました。子どもの甲状腺疾患は5年後に急増し始めました。10年後には10人に一人の子どもが罹患し、甲状腺がんは100人に一人以上の発生率を記録しています。
これに対して国や国のサポーターの御用学者たちは「100mSv 以下のデータは無い。」等ととんでもないウソを繰り返しています。原爆症認定集団訴訟、チェルノブイリ後の健康被害の調査報告はたくさん出されています。そのどれか一つを読むだけでたくさんの「100mSv 以下のデータ」に遭遇します。「内部被曝を隠ぺいした」アメリカの核戦略に追随する体制を維持しようとする似非学者たちは、原爆被爆者に対して、チェルノブイリ被害者に対して「みなさんの疾病は放射能との関係は確認されていません」という一言で全て切り捨ててきたのです。これを福島・郡山に再現させてはなりません。
たかがお湯を沸かすだけでこのような危険極まりない原子力を用いることは、お互いに助け合いながら生きようとする健全な国民が選択するところではありません。都市部の人間が電力を享受するために過疎地の人々に危険を押し付ける思想は、平和を希求する市民の望むところでは決してありません。アメリカの核戦略に従って住民を犠牲にする日本の政治には、終止符を打たねばなりません。国民が良く事実を学び、自らの意思を明確にして、主張していくしか日本の主権を確保する方法はありません。頑張りましょう。
京都大学に対し以下5点申し入れる。
1:経営協議会委員・藤洋作氏の選任過程とその責任の所在を明らかにせよ。
現在、京都大学経営協議会委員の一人に関西電力元社長で現相談役の藤洋作氏が就いている。氏は05年美浜原発事故における5人の労働者の死亡、6人の重傷の責任をとって辞任している。つまり経営の失当が確定して社長を辞任させられた人物である。かかる人物が経営協議会委員に選任されるに至った理由、その選任過程、及びそこにおける責任の所在を回答せよ。7月15日付け申し入れに対する回答では「藤洋作は美浜原発事故に際して遺族に謝罪している」という旨のことが言われたが、それは、責任者としては当然のことであり、むしろ氏の経営が失当であったということを本人が認めた行為に他ならず、選任されるべき理由ではない。京都大学は、藤洋作氏の選任過程とその責任の所在を明らかにせよ。
2:関経連の「原発再稼働要求」に対する京都大学の立場を明らかにせよ。
関西経済連合会(以下関経連)は、6月以降、数度にわたって「原発の早期再稼働」を要求する内容を政府に申し入れている(6月10日「電力需給と風評被害にかかわる緊急提言」、7月21日「安定的な電力確保に関する緊急要望」、8月5日「東日本大震災からの復興の基本方針に対する緊急提言」、9月22日「電力の安定供給確保に関する緊急要望」)。経済的利害を優先し、原発のもたらした被害などを棚に上げて再稼働を主張する関経連の姿勢は断じて受け入れることは出来ない。京都大学として「原発再稼働要求」に対する立場を明らかにせよ。
3:10/1「アトムサイエンスフェア」における入場拒否は表現行為の自由と学生自治に対する冒涜行為だ。京都大学はこのことの責任を明らかし、謝罪せよ。
10月1日、京都大学原子炉実験所は放射線医学総合研究所の島田義也氏を講師とする一般公開の講演をおこなった。福島第一原発事故という情勢の中で、「放射線の人の健康への影響」を題材にした講演は、現実の人間の生命・健康に深く関わる問題である以上、誤った内容や無責任な言説を流布するということを防ぐべく最大限に努力すべきである。そのためにも、批判も含めた広範な議論を保障すべきである事はいうまでもない。しかし京都大学原子炉実験所は島田講演会に反対し、開催中止を求めた学生や市民に対して、「反対し、中止を求めるデモなどの行為をおこなったから」という理由で入場を拒否し、実力で制限するというとんでもない措置をおこなった。この措置は「講演に参加したいなら講演の内容に反対するようなデモをするな」と受け取れる。万人に保障されるべき当然の表現行為・示威行動をおこなったことを理由に排除するという措置は、表現行為・示威行動そのものの否定に他ならない。このような原子炉実験所の運営を許したところには自由な議論や表現活動などが保障されえないことはあまりにも明らかであり、同じ論理によって大学の運営全般が行われるなら、学生自治は完全に否定される(学生の自由な表現活動の保証なくして学生自治が成立することはないことは論を待たない)。そのようなことを原子炉実験所が大学の名の下におこなうことは学問の否定に他ならない(学問は自由な表現・討論を前提としていることは言うまでもない)。この措置に対して、京都大学として全面的に謝罪し、明確な総括を出すことを求める。
4:警察の構内侵入を認めたことの責任を明らかにせよ。
上記の原子炉実験所の対応は、警察権力の大学構内への侵入を許可するという言語道断の対応と一体でおこなわれた。明確に国家権力の威を借りて、反対する意見を封殺しにかかっているということだ。現に、当日の行動に参加した学生は、正門に入ろうとするなり「入るな、逮捕させるぞ」という恫喝を職員から加えられている。このようなことは絶対に許されない。京都大学としてかかる対応の誤りをみとめ、責任の所在を明らかにせよ。
5:10/1講演での運営の誤りを認め、対外的に発表せよ
上記のごとき対応がとられた講演は、およそ「公正」でも「客観的」でもありえない。実際に、島田義也氏の講演は、放射線の被害を意図的に過小評価し、国や地方自治体や電力会社などのそれに対する責任を過小にすることを容易にする内容である。それは、福島で放射線被曝を現に受けている人々に対し、その健康を守らないことの容認とも捉えることができよう。この講演をそうした体たらくにしたのは、他ならぬ京大当局自身である。このことを率直に認め、アトムサイエンスフェア講演会での運営は誤りであり、それ故その全内容に対して京大としては何ら責任を負えないということを直ちに対外的に発表せよ。
大学奪還学生行動
10・1集会実行委員会