本日、葛西打倒京大集会が多くの学生の注目のなか打ちぬかれました!
集会後はデモをやり、学務部学生課課外活動掛にて要求書提出行動を行いました。
少し長いですが、要求書の内容を記します。
要求書
京都大学総長 松本紘殿
一、 2012年10月1日から、京都大学経営協議会の委員にJR東海会長の葛西敬之が加 わっていることは、絶対に認められない。直ちに解任し、以後京都大学の如何なる意思決 定にも運営にも葛西を関与させないよう要求する。
一、葛西の経営協議会委員就任の責任を取り、松本紘総長は即時辞任するよう要求する。
以下、上記要求の趣旨を4点述べる。
(1)葛西は、不当労働行為=犯罪行為の下手人である。
JR東海会長・葛西敬之が京大経営協議会委員であることを認めることができない第一の理由は、葛西敬之が不当労働行為の責任者であることが明らかになっているからである。
2012年6月29日、東京地裁は国鉄千葉動力車労働組合(以下、動労千葉と呼称する)が提訴した、国鉄分割民営化に伴う動労千葉組合員への解雇が不当労働行為であり、無効であるという訴えの一部を認め、不当労働行為が存在したことを明確に認定した。(以下、6・29判決と呼称する) また2013年9月25日、解雇撤回・JR復帰を求める動労千葉・鉄建公団訴訟控訴審の判決に於いても、国鉄が「不当労働行為意志の下に、本件名簿不記載基準を策定」したことを東京高裁も認定した。
6・29判決において認定された不当労働行為とは、国鉄分割民営化において職員が一旦全員国鉄を解雇され、JRに選別再雇用される際に、分割・民営化に反対した動労千葉を不当に差別し、動労千葉組合員からJRに再雇用されない者を生み出すという目的を持って採用候補者のリストを書き換えるための基準を急遽設置したことである。
この不当労働行為そのものである採用候補者名簿の作成責任者とされているのが、当時の国鉄職員局次長で、現JR東海会長の葛西敬之である。
判決は「(国鉄当局は)改革労協側の姿勢に触発されるなどして、動労千葉等、分割民営化に反対する労働組合に所属する職員を不当に差別する目的、動機の素に、名簿不記載基準を策定した」「本件名簿不記載基準が策定されなければ、原告らは採用候補者名簿に記載され、その結果、JR東日本に採用されたはずである」と述べている。動労千葉組合員を不当に差別し、彼らから25年間職場を奪い、生活を破壊してきた犯罪者が、京大の経営にわずかでも関与することなど絶対に許すことは出来ない。
さらに、この国鉄分割民営化における不当労働行為は、葛西自身が半ば認め、開き直っている。葛西の著書「国鉄改革の真実」では国鉄分割民営化は「労務対策であった」と述べられており、国労闘争団が提訴した08年の鉄建公団訴訟での証人尋問においては「(職員管理調書の評価も)分割民営化に賛成すればプラスに評価される」と露骨に組合の姿勢で労働者を選別する意思を認めている。明確に国労、動労千葉など分割民営化に反対する労働組合を不当に差別し、当該組合を破壊することを主たる目的として分割民営化を強行したことを自認しているのだ。
国鉄分割・民営化によっては20万人以上の国鉄労働者が職を追われ、1047名が解雇され、その過程において200人以上が自殺に追い込まれている。この国鉄分割民営化を契機としていわゆる新自由主義政策が社会に蔓延するようになり、外注化を通した非正規職の拡大が進行し、今や全労働者の4割、青年の半数以上が非正規職で低賃金・不安定雇用の現状を強制されてきた。相次ぐ規制緩和によるJR西日本の尼崎事故(05年)や、分割民営化における人員削減・ベテラン労働者の大量解雇によるJR函館線の脱線事故、レール破断など重大事故があらゆる産業で相次いでいる。こうしたことの直接の責任を負いながら、まるでそれが自分の功績であるかのごとく語る人物を京大の経営に関わらせることは、絶対に許せない。
(2)葛西は、原発推進と福島・被災地圧殺の張本人である。
JR東海会長・葛西敬之が京大経営協議会委員であることを認めることができない第2の理由は、葛西敬之が福島第一原発事故で生み出された災禍を労働者・学生に強い、電力会社・大企業の生き残りのために原発を再稼働し、原子力政策を維持するように主張してきた原子力村の頭目だからである。
2013年9月30日付産経新聞記事で葛西は「これまでに原発事故による死亡や、放射能被曝(ひばく)による発病が記録された唯一の事例はチェルノブイリで、即死者は31人であった。火力発電に伴う死亡者はその千倍強に及ぶとされる。千年に一度の大地震に福島原発の構造体そのものは耐え得た。津波被災への緊急対応の不手際は否定できないが、放射能による直接的な死亡者はなかった。その教訓を生かした深層防護の徹底により日本の原発の安全性は飛躍的に高まっている。火力発電よりも遥(はる)かに安全な原発を速やかに再稼働すべきではないか。」と寄稿している。
また2011年5月24日付産経新聞で葛西は「原子力発電はクリーンで低コストの自前電力を確保する国策の切り札として推進されてきた。原子力を利用する以上、リスクを承知のうえで、それを克服・制御する国民的な覚悟が必要である。・・腹を据えてこれまで通り原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない。政府は稼働できる原発をすべて稼働されて電力の安定供給を堅持する方針を宣言し、政府の責任で速やかに稼働させるべきだ。今やこの一点に国の存亡がかかっている」と寄稿した。
このおぞましい主張は、怒りなしに読むことはできない。放射能被曝による発病の例は枚挙に暇が無いし、即死者しか数えないことは放射能被爆の長期にわたる影響を完全に無視している。火力発電による死亡者がその千倍強というデータはどこからきているか分からないが、「『反原発』の不都合な真実」(藤沢数希)あるいはネットで言われている試算(池田信夫)に近いようである。しかしこれらは論理的あるいは統計的誤謬(たとえば消費電力量と死亡者数を線形相関に見ている点。日本の現在の火力発電所の環境汚染対策を考慮していない点など)を含むとして批判されている。原子力が火力より死亡者を出さないなど全く以て安易かつ楽観的な提言と言わざるを得ない。また葛西は今回の事故による直接の死亡者は無いとしているが、直接の死亡者が無いとはどういう意図の発言なのか。すでに震災と事故の関連死は2013年8月までに1459名認められ、同月20日に発表された健康調査において、新たに16人の子供たちの甲状腺から異常が見つかっている。事故の反省をこのような形でしかできない葛西は、人の命をどう捉えているのか理解に苦しむことである。葛西は、こういった子供たちの被害や福島第原発事故によって故郷を追われ、今この瞬間も放射線被曝で命と生活を脅かされている数十万もの人たちの現状を「リスクを承知のうえで」「腹を据えてこれまで通り原子力を利用し続ける」と開き直っている。政府の責任でとはどういう意味か。不可逆な人的損害の責任をどうやってとるのか。葛西はJRをはじめとする企業が生き残るためならどのような被害も労働者・学生におしつけるという立場を鮮明に表しているだけだ。
しかもこういった葛西の主張を契機としてか、日本経団連などは原発再稼働を表立って主張し始めるにいたった(2011年の5月以降)。まさに葛西こそ、福島の怒りを圧殺し、原発政策を推し進める張本人である。絶対に許すことはできない。
(3)葛西は、改憲・戦争策動、それと一体の公務員労組破壊の張本人である。
JR東海会長・葛西敬之が京大経営協議会委員であることを認めることができない第3の理由は、葛西敬之が安倍政権と一体となって改憲・戦争策動を推し進める張本人だからである。
安倍政権は2013年9月17日から私設諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下、安保法制懇と呼称する)を再開。ここで年内に報告書をまとめ14年初頭にも政府として解釈変更へ踏み出そうとしている。安保法制懇のメンバーは、14人全員が集団的自衛権派で固められ、なんとその中に葛西敬之も加わっているのだ。
その背景には、米政府が大恐慌の中で新たな市場拡大のために打ち出した「新軍事戦略」がある。米政府は、昨年8月に発表した「アーミテージ・ナイ報告」において中国との軍事対決を強調しつつ、日本に対して「集団的自衛権の禁止は日米同盟にとって障害物」と突きつけた。安倍政権はこれに応えて昨年衆院選の公約で「米国の新国防戦略と連動して自衛隊の役割を強化する」「集団的自衛権行使を可能とする」と掲げたのだ。
また葛西は、2013年10月6月付の読売新聞の中で「集団的自衛権の行使」と一体で「特定秘密保護法」が必要不可欠であると主張している。そして「この法案の画期的な点は2点」だとして挙げているのが、「敗戦以来、初めて、公務員は『国家』『国益』『国民』のために存在、機能するという位置づけがなされたこと」と、公務員の「適正評価」なるものの導入である。これは国家に忠実でない公務員の首を切り、労働組合を解体し、改憲と戦争に動員するということだ。こういった政策を絶対に許すことはできない。
(4)葛西は、京都大学を「グローバル人材育成拠点」化していく張本人である。
JR東海会長の葛西敬之が京大経営協議会委員であることを認めることができない第4の理由は、葛西敬之がこの京都大学を大企業が生き残るための「グローバル人材育成拠点」として位置づけ、「学長権限の強化」の下にあらゆる新自由主義的な政策を推し進めているからである。
安倍首相は本年5月28日の教育再生実行会議において「大学力こそ日本の競争力の源で、成長戦略の柱だ」と主張した。また安倍政権が掲げる「日本成長戦略」の中には「原発や鉄道、水道などの日本のインフラを、利益が出るように経営を合理化し、その経営ノウハウごと輸出していく」「大学改革全般に関する『教育再生実行会議』の提言を踏まえつつ、国立大学について、産業競争力強化の観点から、グローバル化による世界トップレベルの教育の実現、産学連携、イノベーション人材育成、若手・外国人研究者の活用拡大等を目指す」という旨が書かれている。つまり大学をこの「パッケージ型インフラ輸出」のための「グローバル人材育成拠点」にしていくということだ。
しかし国鉄分割民営化の不当性が明らかとなり、政府が原発事故に無責任な態度をとっている現在において、すでに破綻した「経営ノウハウ」とともにインフラを輸出するために大学を利用することは許されない。国鉄分割民営化を不法に推し進めた葛西が京大経営協議会に加わっているということそのものが、京都大学における「グローバル人材育成拠点化」を象徴しているのである。
上記の趣旨に踏まえ、冒頭で掲げた要求を申し入れる。加えて、この要求に対する回答を文書において11月20日までにおこなうことを要求する。
2013年10月30日
大学奪還学生行動